−プロローグ−

 娘が明日、東京から戻って来ると言うことで私は、この1週間というもの、休む間
もなく、家を掃除した。
 家でじっとしていても落ち着かず、台所で立っていても落ち着かない。どうしよう
もなくなんだか嬉しくて嬉しくてきっと仕方ないのね。なんて自分で苦笑している始
末だった。

 私の娘、潤子は高校卒業後すぐに上京し、デザイン学校に通いながら、働きながら、
下宿暮らしをして頑張っていた。親としては鼻も高くなるようなとても、良くできた
娘だった。
 そして、その下宿と言うのは私が学生の頃にお世話になっていたと言う花丸付きの
下宿で、そう…、親子二代に渡り、お世話になってしまっているんだった。
 私は潤子が家に戻ってきた時に、下宿での話を聞くのが楽しみだった。あの頃の…、
そう知らず知らずに聞いているうちに学生だった頃の私を潤子と重ねてしまう。懐か
しさが心一杯に広がる。顔は綻びっぱなしになる。

 日、1日1日、潤子が帰ってくる日が近づいてきた。
 そして、当日。
 玄関の前を行ったり着たり、うろうろと心はなんだか学生に戻る。
「潤子はまだなの!どこか寄り道でもしてるんじゃないのかしら!もうっ!あの子っ
たらしょうがないんだからっ」
 自然とこんなひとりごとが飛び出る。潤子、潤子!心の中は下宿での話を聞きたく
てうずうずしている私だった。もちろん、潤子にこんな子供っぽい私を見せたりでき
ないので、見た目は母親を気取っているのは当然。だって一応、これでも母親ですも
のね。(苦笑)