−幸せと不幸せ−


 潤子の彼氏の名前は、霞沢星一。そして、彼氏のお父さんの名前は、霞沢潤平。

 やはり…、あの人だった。
 潤子が東京へ戻った後、私は夕方になると涙が自然に滲んでくるのだった。

 潤子は下宿の改築工事の間、彼氏の家でお世話になるとのことだった。許すも許さ
ないも、もう…、潤子の心を止めることは不可能だろう…。
 かつて、学生だった私の不幸せな恋を思うと、潤子には今の恋を実らせてあげたい。
…と思う反面…、この恋はだめよ。絶対にだめ!そんなどうしようもない。このまま
この恋が突き進んでいくと…、当然、あの人に会わないわけには行かないではないか。

 潤子が一緒に東京へ来て欲しいと、必死に私に縋る目を思い出していた。
 彼氏の家にお世話になる以上、この私と一緒に挨拶に行って欲しいというのだった。
 こんな馬鹿な話ってないわ。

 まさか…、
 会えるわけないじゃない。

 あ〜、どうすればいいんだろう。
 心でこんなセリフをもう、何千回も何万回も言っている。

 東京では潤子の恋が発展していくと言うのに…。この目で、潤子の恋を見れないと
言うのは酷だった。

 幸せと不幸せが一度に私の肩を重くする。

 あの頃の私に舞い戻ったようだった。あの時以来の、幸せと不幸せが今の私に覆い
被さる。ここでじたばたしていても仕方無いけど、しょうがない。
 いてもたってもいられない日々が続く。

 気持ちの限界。我慢の限界。堪える事の限界。そんな限界がそろそろ私の身を打ち
砕きにやってきた。

 私の不幸せを幸せに変えるために、潤子の幸せを幸せのままにしておく為に…、そ
れは、どうすればまだ分からないけど、私が東京へ行かなければ始まらないような気
がして、潤子の下宿に電話を入れて、東京へ行くことを伝えてもらう事にした。

 その夜、私は東京へ行く支度をした。胸の高鳴りは治まることを知らず、全く…、
私の心臓、どうにかなっちゃったんじゃないの? そんな感じなのだった。

 色々な思いは既に、東京へ飛んでいた。

 幸せと不幸せ…。二つはいつも重なりあっているの?
 いいえ、そんなことはないはず。きっと気持ちの不幸せを取り除いてみせるわ。

 母親としての苦労のおかげ? 私は学生の頃よりも何十倍も強くなってきた気がす
る。
 今なら…、っていう思いが先に立って私を誘導していく。そんな私を私は感じてい
たのだった。
                 おわりっ