−過去と現在の狭間−

 私はホテルのベッドで泣いていた。
 やはり、あの人だった。

 今日、下宿の潤子の部屋に、潤子の彼氏とその父親が訪れた。
 そう、あの人だった。

 あの人と目と目があった瞬間、とんでもない感情が私の全身の血管を走り抜けた気
がした。
 そう、思考能力というのか…、もう何もかも混乱してしまい、私は私を失ったと、
いう感じなのだ。

 あの人達が帰るなり、自分をなんとかまともに見せかけてた気力と体力と精神が砕
け散った。私はすぐさま、荷物をまとめて、近くのホテルへチェックインして、部屋
を取った。
 とにかく一人になれる所といえば、こんなことしか浮かばなかったから…。
 それでも私はなんとか一人になれる場所を得、学生時代へ戻ったようにシクシクと
泣いてしまった。

 どうしてこんなに涙が溢れ出るんだろう?いい年してかっこ悪いことだから、そう
だから私は自分でも知らない間に一人になれる場所を探したのかも知れない。

 あの人、そう潤平は全然、変わってなかった。だからよけいに涙が出るのかな?
 潤平は、苦労したのだろうか、潤平はどんな人生だったんだろうか?
 気にかかることが止めどなく心を玩ぶ。

 潤平は私を見た瞬間、黒い瞳が大きくなってたわ。驚いていた…、確かに、動揺し
ていたわ。
 今の私を見てどう思っているだろうか…。

 その夜、私は夢を見た。若い潤平と若い私がデートをしている。手を繋いだ瞬間、
私は一度に年を取り、潤平は私と目があって、手を放した。
 潤平は顔を引きつらせて、消えてしまった…。

 翌朝、鏡の前の私は、目を腫らして、まるで妖怪か魔物のような顔をしていた。
 あの夢が、私をいじめる。

 いい年して…。
 こんなフレーズが思い浮かぶ。
 そう考えると少し、恥ずかしくなった私は、心に力を入れ直してホテルをチェック
インした後、潤子の下宿に戻ったのだった。
                  つづくっ